第65章 余裕のある大人の夜
ジャンは風呂から上がると、
エマの部屋でベッドの淵に座り、本を読む。
しばらくすると、
エマも部屋に戻ってきた。
「エマさん、本借りてる。これ、面白いな。」
ジャンはそう言って
読みかけの本を少し持ち上げる。
エマは、
「あ。それ、私も好きなんだ。」
そう言いながら、ジャンの隣に座った。
エマの身体から、風呂上がり特有の
甘い石鹸のいい匂いがして、
ジャンは気持ちを抑えるように、
エマから少し離れる。
「ねぇ、急に避けられると傷付くんだけど。」
エマはそれに気付き、
ジャンの顔を覗き込んだ。
「……いや、なんか、
エマさんいい匂いするから、」
「いい匂いするから?」
エマは続きを言えと言わんばかりに、
ジャンに近付く。
「……欲情したらいけないから、離れました。」
ジャンは小さい声で呟くように言い、
「何で敬語?」
エマはジャンの正直な告白に頬を緩めた。