第64章 余計なお世話
日も沈んできた頃、三人は帰路に就く。
「エルヴィンさん、馬で来てたんですか?」
エマが艶やかな毛並みの
馬を撫でながら言うと、
「ああ。急いでいたからね。
ジャンがエマに手を出さないか心配で。」
エルヴィンは横目でジャンを見た。
ジャンは何も言えずに
バツが悪そうに目を逸らす。
エルヴィンはそんなジャンを見て
小さく笑い、
「エマ。君が乗りなさい。」
と、声をかけた。
「え。私だけ悪いですよ。」
「それでは私とジャンが
仲良く二人で乗ればいいのか?」
エマはエルヴィンとジャンが
二人で楽しそうに
馬に跨っているところを想像し、
思わず吹き出す。
「分かってくれたならいいんだ。」
エルヴィンはそう言いながら、
エマを馬に乗せた。
基地に着くとすぐ、エルヴィンは
一人の兵士に声を掛けられる。
「エルヴィン団長!
どこに行っておられたのですか?
例の調査書類の提出を、憲兵団から
早めに頼むと連絡が入りまして……」
兵士は早口でエルヴィンに申し送りをする。
エルヴィンはその申し送りに
返答をしながらエマに目配せをし、
基地の中へ入っていった。