第64章 余計なお世話
少しの時間が流れた後、
エルヴィンは静かに目を覚ます。
『寝てしまっていたか……』
ゆっくり顔を上げると、
ベンチからかなり離れた場所に、
エマとジャンの姿が見えた。
二人とも、食い入るように
地面を見つめている。
『何をしているんだ?』
エルヴィンはそう思いながら、
二人の様子を観察する。
すると、
「エマさん!五つ葉あった!!!」
と、ジャンが声を上げた。
「え!五つ葉?!四つ葉より、
そっちの方が珍しいんじゃないの?!」
エマはジャンに駆け寄り、
手元を見て驚いている。
『なるほど。四つ葉のクローバーを
探しているのか。』
エルヴィンは、自分の頬が
少し緩むのを感じ、
『私も参加するかな……』
と、ゆっくり立ち上がった。
しばらくして、
「あ!エルヴィンさん!
起きたんですか?」
エマはエルヴィンが立ち上がったことに気付き、
声を掛ける。
エルヴィンはエマに笑顔を向け、手招きをした。
エマとジャンは立ち上がり、
エルヴィンの元へ行くと、
「君たちが探しているのは、これかな?」
エルヴィンはそう言って、
大きな四つ葉をつけたクローバーを
エマに手渡した。
エマは目を疑い瞬時に固まる。
「だっ、団長……
いつのまに見つけたんですか……?!」
と、ジャンは愕然とした声を出した。
「エルヴィンさん、どこにあったんですか?
私たち、あんな遠くまで
探しに行ってたんですけど……」
エマは自分たちの居た、
遥か遠くの草原に目を向ける。
「いや、私の足元に生えていたんだよ。」
エルヴィンは驚いた表情のエマを、
楽しそうに見つめた。
「灯台下暗しってやつですね……」
エマはそう言いながら、横目でジャンを見る。
「やっぱり、こういうところでも
団長と一兵士の違いが出るよな。」
ジャンは思わずその場に座り込んだ。