第64章 余計なお世話
「そうか……
私は普段、そんな話し方をしていたのか。」
突然後ろから声が聞こえ、
二人は同時に振り返る。
「え、エルヴィン団長!」
ジャンは立ち上がり、反射的に敬礼をした。
が、エルヴィンを直視できず、目を逸らす。
「え、エルヴィンさん。
いつから聞いてたんですか?」
まだ笑いが止まらないエマが
声を詰まらせながら言うと、
「君は私の真似でどれだけ笑うんだ。
私の話の件は全部聞いたぞ。」
エルヴィンはそう言いながら、
エマの隣に座った。
ジャンは敬礼をしたまま、
「す、すみません……」
と、蚊の鳴くような声で言う。
「ジャン。敬礼をやめなさい。」
エルヴィンは冷静な声でジャンに言った。
「本来ならそう簡単には見逃さないが、
今回は別だ。
久し振りにエマが
こんなに笑っているところを見たよ。」
エルヴィンはそう言うと、嬉しそうに笑う。
ジャンはホッとしたように手を降ろすと、
「以後気を付けます………」
そう言って、元居たエマの隣に座った。
「エルヴィンさん、仕事は?」
エマは心配そうに問いかける。
「君とジャンが二人で出かけると知って、
呑気に仕事もしていられないだろう。
お蔭で仕事が捗ったから、
ここに来てみたんだよ。」
エルヴィンはそう言いながら、
ベンチに深くもたれ掛り、草原を見渡した。
「ジャン。ここはいい場所だな。」
エルヴィンのその言葉を受け、
エマとジャンも自然と草原に目が向く。
ジャンは、
「ありがとうございます。親に感謝します。」
と、エルヴィンに笑いかけた。