第63章 ジャンの想い
辺り一面、蓮華の花とクローバーで溢れ
太陽に照らされた緑は、優しい色を生む。
優しくそよぐ風は、
エマの髪を静かに揺らした。
「すごい……
こんな所があったんだ。」
エマは思わず声を上げ、
「だろ?」
ジャンはそう言うと、
近くのベンチに腰掛ける。
「ここ、特等席。来いよ。」
ジャンに言われるがまま、
エマはベンチに座った。
「ここにいると、
壁があること忘れそうになるね。」
エマはそう言ってジャンに笑いかける。
「小さい頃、よく連れてきてもらったんだ。
俺がまだガキで、調査兵団に興味を持った時に。
……調査兵団に入らなくても、
広い世界を味わえる場所は
たくさんあるってな。」
ジャンはそう言って空を見上げた。
「それなのに、今は調査兵団にいる。
わかんねぇもんだな。」
エマはそう言うジャンの顔を見て笑う。
「私はここでジャンに出会えたから。
ジャンが調査兵団に入ってくれて
良かったと思っちゃうけどね。」
「……俺と出会えて、良かったと思う?」
「当たり前でしょ。」
エマが即答すると、
ジャンは優しくエマの唇に口づけした。