第63章 ジャンの想い
「ジャン。初めて会ったときは、
すごい素っ気なかったのにね。」
エマは笑いながら言う。
「エマさん、俺たち兵士にも、
普通に話しかけてくるからな。」
「嫌だった?」
「嫌じゃねぇけど、びっくりしたよ。」
ジャンはそう言って、前を向く。
「普通、調査兵団の料理人って、
あんまり兵員と関わらないんだよ。」
ジャンは大きく息を吸うと話し出した。
「俺たちは心臓を捧げてるから。
死ぬことが、いつも意識の中にある。」
エマのジャンの肩を持つ力が
自然と強まった。
「そんな奴らと仲良くしたところで、
最終的に悲しみしか
残らないと思うんだろうな。」
「そんなことないよ!」
エマは思わず声を上げた。
「ああ。エマさんが
そんなことないと思ってくれてるのは
知ってるよ。」
ジャンは怒ったようでもあり、
困惑しているようでもあるエマの顔を見て笑う。