第63章 ジャンの想い
「エマさんって、ほんと俺に容赦ないな。」
ジャンはため息を吐いた。
「いいだろ。俺がこうしたいんだから。
別に思わせぶってくれたらいいよ。
てか、もっと思わせぶれよ。」
「思わせぶれって……面白い言い方だね……」
エマはそう言うと、小さく笑い出す。
「おい、笑うタイミングおかしいからな。」
ジャンはそう言ってエマを小突いた。
30分程歩いた頃。
辺りは人通りの少ない田舎道が続いていた。
「ジャン。もう結構歩いたよね……」
エマはそう言って疲れた表情を見せる。
「ちゃんと食ってないからそうなるんだろ。
体力なさすぎだろ。」
ジャンは立ち止まると、エマを見る。
「強く否定はできないけど、
ジャンは普段から鍛えてるから
平気なのもあると思う!」
エマは語尾を強くして言った。
「それもそうだな。」
ジャンはそう言うと、
いきなりエマを横抱きする。
「ちょ、待って!
そう言う意味で言ったんじゃない!」
エマは少し赤面すると、ジャンの胸元を叩く。
「まだ少し歩くから。
取り敢えず、黙ってここで休んでて。」
ジャンはそう言って笑うと、再び歩き出した。
「………なんか、眠くなるね。」
エマはジャンの胸に大人しく抱かれ、
目を瞑る。
「この状況で寝られるって、
どんだけ疲れてんだよ。」
ジャンは呆れたように言った。
「あのリンゴ事件の時から
思ってたんだけど、ジャンの鼓動の音、
眠くなるんだよね。」
「リンゴ事件って名付け、どうなの?」
「あれは事件だったでしょ。」
エマはそう言って笑った。