第62章 温かい手
「正直、もう何をしても
話は聞いてもらえないんだと思いますし
たとえ聞いてもらえたところで、
リヴァイさんの心は揺らがないと思います。」
エマはエルヴィンの胸元を
強く掴んだ。
「でも、また笑って欲しいと思うんです……
もう恋人同士に戻れなくてもいいから、
穏やかな表情のリヴァイさんを
取り戻したいと思うんです。」
エマは涙を堪えて話し続ける。
「だから、その方法を探したくて。
その為だったら、私は」
「分かった。もういい。」
エルヴィンはエマを強く抱きしめた。
「君の気持ちはよく分かったよ。
そしてリヴァイも、分かっているはずだ。」
エルヴィンはエマの背中を摩る。
「だが、君がリヴァイにその行為を
続ける限り、リヴァイもまた
胸を痛め続けることだろう。
……リヴァイはきっと君に向き合う時が来る。
そしてその結果、
もしリヴァイが君を選ばなかったとしても
君の側には私がいる。
それだけは覚えておいて欲しい。」
エルヴィンの言葉は、
エマの胸を貫く。
「………すみません、
また、少し泣いてもいいですか?」
エマは涙を堪えきれず、
エルヴィンに問う。
「いくらでも泣けばいい。
私は君を抱きしめる役に徹しよう。」
エルヴィンはそう言って小さく笑うと
エマの髪をそっと撫でた。