第62章 温かい手
しばらくの沈黙の後、
「エマ。もう、リヴァイを
部屋に招くのはやめなさい。」
エルヴィンはそう言って
エマの肩を摩る。
「それも聞いたんですか?」
エマは顔を埋めたまま問いかけた。
「そうだな。聞いた、というより
当てた、が正解だ。」
エルヴィンはそう言うと、
エマの顔を見つめ、口元を優しく撫でる。
「慣れないことをしているのが分かるよ。
痛いだろう?」
「……よくそんなことまで分かりましたね。」
エマは少し俯いて答えた。
「どれだけ必死に咥えたら
こんなになるんだ………」
エルヴィンの言葉にエマは俯いたまま、
何も言えなくなる。
「そこまでして、
リヴァイを引き留めたいのか?」
エルヴィンは穏やかな声のまま話す。
「そこまでしないと
話を聞いてもらえない相手に、まだ縋るのか?」
「……できることなら、したくないです。」
エマの言葉に、エルヴィンは沈黙する。
「その行為がしたくない、と言うより
その行為をしている時のリヴァイさんの
冷たい目を見たくないし、
冷淡な声を聞きたくないです。」
エルヴィンは黙って
エマのことを抱きしめた。