第4章 エルヴィンの部屋にて
「……まさか、お二人が一緒とは
思っていなかったので、
少し焦ってしまいました……
あの、すみません。」
本棚から救出してくれたジャンは、
頭を掻きながらバツが悪そうに下を向く。
「いや、助かったよ。ありがとう。」
そういうエルヴィンに続いてエマも
「ありがとう、ジャン。変な噂流さないでよ!」
と、茶化しながらお礼を言う。
「お、俺はそんな口外しませんから!」
ジャンはエマの茶化しを真に受け、
また焦った声を出す。
するとエルヴィンは静かに
「・・・そうだな。
口外しないでもらえたらありがたい。
見たままのことを誰かに話すだけでも、
それが別の噂となりかねないからな。
私にとっては問題がなくても、
エマは困ることになるだろう。」
そう言ってジャンを見た。
「いや、私はそんな」
「エマ。」
エマが否定するのを遮るように、
エルヴィンは優しい声で
エマの名前を呼んだ。
「大丈夫。
ジャンは口が堅い男だ。だろう?」
エルヴィンのその問いかけにジャンは
「も、勿論です!このことは
心の奥にしまっておきますので!」
と、敬礼のポーズを取る。
エマはエルヴィンの部屋から出て、
食堂に向かう。
そして、突然抱きしめられたことを思い出し、
また鼓動が早くなるのを感じた。
『あれって、どういうことだったんだろう……』
心の中でエルヴィンの気持ちを
考えようとするが、
思い出せば出すほど、恥ずかしくなってくる。
『やめよう。考えてもどうしようもない。』
エマは考えるのを中断した。