第61章 手放した理由
「…ッ……会ってたら何だっていうんだよ。」
リヴァイは小さく舌打ちし、
またエルヴィンを見入った。
「大方予測がつくな。
お前が何を言われたのか。」
エルヴィンは話し続ける。
「どうせ、お前にエマはふさわしくないとか、
エルヴィンに譲れとか、
そんな言葉で捲し立てられたんだろ。
そんなことでお前はエマを手放すのか。」
「………そうじゃねぇ。」
「お前にエマが幸せにできるか、
そう聞かれた。」
「そうか。それで何て答えたんだ?」
「何も答えてねぇよ。」
「なぜ?」
リヴァイはエルヴィンの胸ぐらを掴むと
壁に押し当てた。
「なぜかって?そんなのお前が
一番よく分かってることじゃねぇか!」
「いつ死ぬかも分からない自分の側にいても
エマは幸せにはなれない。
それならいっそ、壁外調査にはもう出ない、
巨人に食い殺される心配もないエルヴィンに
任せた方がいい。そういう事でいいか?」
エルヴィンは冷静に言い、
リヴァイの目を凝視した。
「分かってんなら
言わせようとすんじゃねぇよ!」
リヴァイはエルヴィンを
掴む手を強める。
「お前は、
それがエマの幸せだと思うんだな。」
エルヴィンは小さく笑った。
「……何がおかしい。」
「いや。お前がそんな自分勝手な
判断をするやつだということを知って、
呆れただけだ。」
エルヴィンは吐き捨てるように言う。
「エマの幸せをお前の秤で量って、
勝手に決め付けるな。」
エルヴィンはそう言うと、
リヴァイの手を掴み、胸から離した。