第55章 強引な理由
「なぁ。
確かに昨日、誘い方が下手だって言ったけど。
別に上手い誘い方をして、
俺を誘惑しろとはいってない。
………てか、自分から誘っときながら
泣かれたら困るんだけど。」
「……泣いてない。」
ジャンはため息を吐き、
横を向いて、込み上げる涙を
必死で堪えるエマの隣で横になった。
「……エマさん。
俺さ、このまま最後までやろうとも考えたけど
やっぱりこのモヤモヤした状態じゃ無理だ。」
エマはジャンに背を向けたまま目を瞑る。
「とりあえず、
昨日何があったか教えてくれない?」
「話したくない。」
「は?」
「だから、話したくないんだって。」
「え?何、じゃぁ俺ここに、
ほんとにエマさんを抱く為だけに呼ばれたの?」
「違うけど………」
「それなら話せよ。」
ジャンはエマの顔を覗き込む。
「………話したら思い出すんだもん。」
「何を?」
「……リヴァイさんの冷たい表情。」
エマはそう言うと、目を瞑った。