第55章 強引な理由
朝方になり、
いつもの慌ただしさを取り戻した
廊下の足音で、エマは目を覚ます。
目の前には、
小さく寝息を立てて眠るジャンがいた。
「……いつの間にか寝てたのか。」
エマはジャンの背中に回した手を離し
涙の跡を拭う。
ジャンは夢を見ているのか、
たまにニヤニヤと笑った。
エマはその様子を見て、つい吹き出すと
「……エマさん……
……おはよ、」
そう言ってジャンは目を覚ます。
「なんかすごい楽しそうだったよ。」
「そっか。まぁ楽しい夢見てたからな。」
ジャンはそう言うと小さく背伸びをする。
「楽しい夢って、どんな夢だったの?」
エマの問いかけに、
「アルミンから聞いたんだけど、
夢ってな、人に話したら
正夢にならないらしいんだよ。
だから今のは良い夢だったから、
エマさんには話せない。」
そう言って笑って答える。
「……何その迷信。」
エマは怪訝な表情でジャンを見た。
するとジャンは、突然何かを考えるような
悩まし気な表情を浮かべた後、
素早くエマに背を向ける。
「どうかした?」
エマは心配そうに
ジャンの顔を覗き込もうとするが、
「いや、何でもないから。
とりあえずエマさんはそこで寝てて。」
と、エマを声で制止する。
「もしかして朝だ」
「おい!それ以上言うな!
てか、言い当てるのもどうなんだよ!」
ジャンは思わず強くツッコミを入れ、
顔だけ振り返り、エマを見る。