第55章 強引な理由
そのままの状態をしばらく続けた後、
ジャンは少しため息を吐き、
「なぁ。エマさん。
エマさんは、辛いからって
誰にでも許すような女じゃねぇだろ?」
と、エマを強く抱きしめながら
優しく頭を撫でた。
「兵長と何があったかは知らねぇけど、
そんな荒れたエマさん抱いても、
俺は嬉しくも楽しくもないんだけど。
勝手に自暴自棄になるなよ。」
ジャンのその言葉を受け、
エマはまた泣き始める。
「エマさんさぁ、
誘うのが下手すぎるんだよなぁ。」
ジャンはエマの背中を摩りながら、
冗談めかして言った。
「………ごめん。」
エマはジャンの胸で泣きながら
やっとそう言う。
「いや、このタイミングで
謝られても困るんだけど。」
ジャンはつい、いつもの調子つっこむ。
「らしくないことするから
ちょっとびっくりしたけどな。
まぁ落ち着いたら話聞くから。
取り敢えず気が済むまで泣けよ。」
エマはジャンの背中に手を回し
嗚咽を漏らしながら、泣き始めた。