第4章 エルヴィンの部屋にて
「………私は、一年前の壁外調査で、
信頼できる仲間を数多く失くし、
自分の右腕も失った。
それでも得られたものは大きかった。
それだけが救いだった。」
「仕事は調査に出られないだけで、
今まで通りできる。
私の代わりなど、いくらでもいる。
………だが、さすがに心の内では、
悄然とせずにいられなかったんだ。」
エマはその時のエルヴィンの
気持ちを考えると、心臓が押しつぶされそうな
何とも言えない感情が込み上げてきて
思わず拳を握りしめた。
「そんな鬱々とした日々を送る中、
エマ。君がここに来た。
君と初めて会った時から5年も経ち、
自らの力で副料理長にまで登りつめ、
ついには料理長にまでなったのに、
君はあの時と変わらない目をしていた。
全く変わらない向上心を持っていたね。」
エマは5年前、
リヴァイに料理を認めてもらってから、
もっと料理が上手くなって
また認めてもらいたい、という
気持ちが芽生えたことを思い出した。
その気持ちは、
この場所に来た今も高まる一方だ。
エルヴィンは話しを続ける。
「そんな君を見ていると、
自分がどれだけ堕落していたか実感したよ。
それと同時に、自分の目的も思い出した。
まだやることがたくさんあるってことも。」
エルヴィンはそう言うと、静かに微笑んだ。