第4章 エルヴィンの部屋にて
「……えーっと、私、
そんな大そうなことした記憶は
ないんですけど……」
エマは記憶を辿ろうと目を瞑る。
「数人の兵員から報告を受けたんだよ。
エマに話を聞いてもらって、
気持ちが楽になったという報告をね。」
エルヴィンの表情は柔らかかった。
「食堂で何人かの兵員から
相談を受けたことがあるだろう?」
「……話を聞いた覚えはありますけど、
いい返答はできなかった記憶しか
ないですね……」
エマは眉間に皺を寄せ、考える。
「いや、彼らは聞いてもらうことで
楽になっていたんだよ。
エマが静かに話を聞いて
丁寧に相槌を打って、
たまに自分の意見や体験を話してくれることで
気持ちに折り合いがついたと言っていた。」
「兵員から直接聞いた話は少ないが、
ハンジからもそのような報告を受けてね。
エマのおかげで、兵員たちの心が
安定したように思うんだよ。
だから、礼を言うのは私の方なんだ。」
エルヴィンは優しい表情で話を続ける。
「……そして、私もエマに
助けられた一人でもあるんだよ。」
「え?私がエルヴィン団長を、ですか?」
エマは思わずエルヴィンの顔を
じっと見つめた。
エルヴィンは真剣な表情になると、
ゆっくり話し始めた。