第52章 怪我の功名には程遠く
「そうだったらいいんですけど。」
ジャンは深くため息を吐き、
「……俺、ここに来てから
片思いしかしてないんですけど。」
と、頭を掻きむしった。
「確かに。ミカサはエレン一筋だし、
エマもリヴァイ一筋か。」
ハンジは納得するように頷く。
「ミカサのことまで知ってたんですか?」
「こんな狭い基地の中なら、噂はすぐ巡る。」
ハンジはジャンの問いに即答する。
「でも、エマはどうだろうね。
今彼女はリヴァイ一筋、なのかな。」
「え!
それ、俺にもチャンスあるってことですか?」
ハンジの言葉に、思わず立ち上がるジャン。
しかし
「いや、君のことじゃないけど。」
と言うハンジの一言で、また椅子に座る。
「でも君の強い想いがちゃんとエマに伝われば、
少なからず揺らぐ気もするけど。」
「……今まで何度か、
それっぽいことはしたんですけどね。」
ジャンはため息を吐いた。
「とりあえず、あの二人が仲直りしちゃったら、
もう無理かもしれないね。」
ハンジが明るい声でそう言うと、
「なのに仲直りの
きっかけ作ろうとする俺って………」
そう言ってジャンは肩を落とす。
「ジャンは根っからの片思い気質だね!」
ハンジはそう言って笑うと、
ジャンの肩を思い切り叩いた。