第52章 怪我の功名には程遠く
「うわー!
こりゃまた、派手に殴られたね!」
ハンジはジャンの顔を見て、声を上げる。
ジャンは、基地の医務室で
ハンジに手当をしてもらっていた。
「……そうみたいです。
でも早すぎて、最初何が起きたか
理解できませんでした……」
ハンジは消毒液をカーゼに付けると、
ジャンの口元に持っていく。
「痛いと思うけど、我慢してね。」
ガーゼを口に当てられ、
ジャンは思わず歯を食いしばった。
「それにしても、君もなかなか男だね。」
ハンジはそう言いながら
帰り際に聞いた、ジャンとリヴァイの
やり取りを思い浮かべ、少し笑った。
「リヴァイにそこまで言える子が
出てくるなんて。私は嬉しいよ。」
「俺は少し後悔してますけどね……」
ジャンは最後に見たリヴァイの顔を思い出す。
「それは殴られたから?
それともリヴァイがエマの元へ行ったから?」
ハンジはニヤリと笑って問いかける。
「………どっちもです。」
ジャンは目を逸らしながら答えた。
ハンジはジャンのその言葉を聞いて笑い出すと、
「それでも君がしたことは
エマの為になったんじゃないの?」
そう言ってジャンの肩を叩く。