第45章 波乱に巻き込まれて
『女性からの人気、半端ないな。
と言うか、みんな宿泊先の心配しすぎでしょ。』
エマはそんなことを考えながら、
ワイングラスを手に取る。
『わ、これ、珍しい白ワイン。
風味最高!さすが貴族の集まり!
コンフィに使ったら美味しいだろうなぁ。』
その時、心の中で興奮する
エマの昂ぶりを抑えるかのように、
力強く人がぶつかって来た。
ぶつかって来たのは、
麗らかな衣装を身に纏った
いかにも貴族らしい女性だった。
「あら、ごめんなさいね。」
女性はワインがかかったエマのドレスを見て、
鼻で笑いながら謝る。
「いえ。こちらこそ、すみません。」
エマは明らかに故意にぶつかられたことに
少し腹を立てながらも、笑顔で対応する。
するとその女性は、
「あなたとエルヴィン団長が
恋人だなんて、嘘でしょう?」
と、耳打ちしてきた。
エマは静かにワイングラスを机に置き、
「お言葉ですが、何を根拠にそんなことを?」
そう女性に問いかける。
「見ていたら分かるわ。
まるで釣り合わないもの。」
女性はハッキリとした口調で答えてすぐ
エマの耳元に口を寄せ、
「それに、私はエルヴィン団長と」
そう言いかけたその時、
「エマ。大丈夫か?」
エルヴィンがエマの元へ駆け寄った。
「エルヴィンさん。すみません……
頂いたドレスを汚してしまって……」
エマはエルヴィンに謝りつつ、
チラッと女性に目をやる。
そして、
「私の不注意です。着替えてきます。」
そう言うと、会場を後にした。
エルヴィンはしばらく
エマの後姿を目で追った後、
「彼女はなかなか強い女性なんだ。
だが、傷付かない訳ではない。
私の恋人をいじめないでもらいたいな。」
そう言って冷たい目で女性を見ると
エマの後を追った。