第43章 ダンスの練習
パーティーを前日に控えた朝方。
エマとジャンは、
菜園近くの資材置き場として使われている、
倉庫の中にいた。
“資材置き場”というだけあって
周りには様々な大きさの
木の板や丸太が積まれている。
倉庫内には窓もなく、薄暗く、何より埃っぽい。
「……なぁ、ほんとにここで練習すんの?」
ジャンは訝しげな顔で、
手に持ったランプを近くの丸太の上に置く。
「だって他に誰にも見つからない場所
ないんだもん。」
エマは小さくため息を吐いた。
「俺はいいけどさ。エマさん大丈夫?
ちょっと暗いけど。」
「……え?な、何その問いかけ。」
「は?だってエマさん
暗いところ苦手なんだろ?」
ジャンの発言に、驚いて目を丸くするエマ。
「いや……それ、何で知ってるの?」
暗いところが苦手、という話は
今までリヴァイにしかしたことがなかった筈だ。
俯き加減で、恐る恐る問いかけるエマに、
「普段、あんだけ廊下に
ランプつけて周って歩いてる人が
暗いところ好きだとは
思わなかっただけだけど。」
平然とジャンは答えた。
「……ジャンって、
意外と人のこと見てるよね。」
「意外は失礼だろ。
まぁ、エマさんのことは大体分かるよ。
見てて分かりやすいし。」
「それ、昨日も言われた。」
「誰に?」
「エルヴィンさんに。」
少しの沈黙の後、
ジャンはエマの目を見つめると、
「……エマさんはエルヴィン団長を
選ぼうと思ったこと、なかったわけ?」
そう言って木材の上に座り込んだ。