第42章 喧嘩の後で
「………で、謝りたいって何を?」
少し落ち着いたジャンは、
訓練場のベンチに座って
エマに問いかける。
「さっき。びっくりしたよね。」
エマもジャンの隣に座り、俯きながら話す。
「……ああ。兵長のことか。」
ジャンは兵長に言い上げられたことを
頭に浮かべながらも、
エマと兵長があの部屋で
そういう行為をしていたという事実も
思い出し、エマから目を逸らした。
「本当にごめんなさい。
親切心で来てくれたのに、あんな感じで
追い返すみたいになって。」
「いいよ。
相変わらずタイミングの悪い俺も悪かったし。」
ジャンは横目でエマを見る。
「そんなことわざわざ謝りに来たのか?」
「そんなことって……
結構大変なことでしょ?」
「そう?」
ジャンは頭を掻きながら考えを巡らせた。
「だって、これが原因でジャンと
リヴァイさんの関係が悪くなって
仕事とかにも支障がでたら……
って考えると、気が気でなくて。
ただでさえ、命に関わる仕事なのに。」
ジャンは小さく笑うとエマを見る。
「笑いごとじゃないんだけど。」
そんなジャンをエマは注視した。
「いや。エマさん、
ほんと心配性だなぁって思っただけ。」
ジャンはそう言うと、
ベンチの背もたれに深くもたれ掛る。
「あれくらいで仕事に支障出たりしないよ。
俺もそこはちゃんと割り切れるから。
兵長は調査中、思い出しもしないんじゃねぇの?」
ジャンの笑顔を見て
エマは大きくため息を吐くと、
「そっか……
そうだよね……でも良かった。」
そう言って、少し笑った。