第40章 幸せな時間の後に
「部屋まで来て悪かったな。何か用事してた?」
ジャンは心配そうに
エマの顔を覗き込む。
「いや、大丈夫。どうしたの?」
エマはジャンの顔を
あまり直視できないままで問いかけた。
「部屋でいいもん見つけたから、渡しに来た。」
ジャンは紙袋に入った本をエマに手渡す。
「これなに?」
「初心者向けのダンス入門。
同部屋のやつが持ってた。」
ジャンはエマに笑いかける。
「ほんとに?!ありがとう!」
「いいよ。どうせ誰も読んでないから。」
「誰も読んでないのに、何であるの?」
「知りたいのか?」
「……気になる。」
ジャンはエマの耳元で
「その本、結構でかいだろ?
だから、エロ本隠して読むのに
丁度いいんだよ。」
と、小声で言って、ニヤリと笑った。
「なっ、それってどうなの?
なんか変なものとかついてない?」
エマは赤面しながら本をジャンに押し付ける。
「付いてねぇよ。それは隠す用なんだから。
てか、エマさんやらしいこと考えすぎだろ。」
ジャンはそう言ってエマの頭を小突く。
「いやいや、
やらしいことしてんのそっちじゃん!」
つい声を荒げるエマに、
「仕方ないだろ。俺の部屋は思春期真っ盛りの
男の集まりなんだから。」
と、ジャンはため息を吐き、
「まぁ、役に立つと思うから、それ使ってよ。」
そう言ってエマの頭に手を置いた。