第38章 エルヴィンの提案
エマは手提げ袋片手に、
エルヴィンの隣を歩く。
「すまないな。
こんなことを頼んでしまって。」
エルヴィンの顔は心なしか楽しそうだ。
「いえ。でもちょっと思うんですけど」
「このくらいの荷物なら、
私一人でも持てたんじゃないかって?」
エルヴィンはそう言ってエマの顔を見る。
「……はい。」
「そうだな。だが、エマを部屋に
連れて行く口実が欲しかったんだ。」
エルヴィンは笑いながら言う。
「そんなことしなくても、
呼ばれたら行きますよ。」
「そうか。」
エルヴィンはそう言って
エマの耳元に口を近付け、
「あんなことがあったのに、
私の部屋に一人で来てくれるのか?」
と、囁くように言った。
「なっ、それは……」
エマは思わず顔を赤らめる。
「いい反応だ。
だが、今日は何もするつもりはない。
仕事中だからな。」
エルヴィンはそんなエマを横目に平然と話す。
「今日は、って言うのもおかしいですし、
仕事中じゃなくても、ダメです……」
エマはなかなか収まらない
顔の赤みを冷まそうと、
手で顔を仰ぎながら言った。
「なんだ。リヴァイが帰ってくると、
やはりガードが固いな。」
エルヴィンはつまらなさそうに息を吐く。
「完全にからかってますよね?ね?」
そう言って顔を覗きこむエマに、
エルヴィンはまた笑った。