第36章 リンゴ事件
「あ、ここです!今行きます!」
エマは声を張って返事をすると、
すぐに立ち上がった。
「ジャン、さっき言いかけてたの何だった?」
「……いや。またでいい。行って来いよ。」
ジャンはエマの背中を押す。
「ごめんね、また今度ちゃんと聞くから。」
エマはそう言うと、カーテンを捲り
医務室を出て行った。
「リヴァイさん、私がここにいること
よく分かりましたね。」
エマが小走りでリヴァイに近付くと、
「ジャンの見舞いだろ。
お前の行動くらい、大体予測がつく。」
リヴァイはエマに目を向ける。
「エレンが、もう一杯
スープを飲みたいんだと。」
「エレン、食欲戻ってきたんですか?」
エマは嬉しそうに声を上げた。
「ああ。もう問題ないだろう。」
「良かった……すぐ持っていきます!」
エマは食堂に向かって走り出した。
「エマ。」
そんなエマをリヴァイは呼び止める。
「何ですか?」
エマは振り向き、リヴァイを見た。
「ジャン、どうだったんだ。」
「……意外と元気そうでしたよ。」
「そうか。ならいい。」
エマは早歩きで進みながら、
ふと考えを巡らせる。
『ジャン、熱で少しおかしかったのかな……
さっきのことは、リヴァイさんに
言うような話じゃないよね。』
自分の中で整理し結論を出し、
少し歩くペースを速めた。