第35章 ハンジの説教
「それにしてもさ、エルヴィン。
おかしいんじゃない?」
その頃、エルヴィンの部屋では、
ハンジがため息を吐いていた。
「何の話だ?」
エルヴィンは書類を書く手を止めず、
ハンジに問いかける。
「エマのことだよ。
ものにできそうだったんでしょ?」
「……その言い方は
どうにかならないものかな。」
「他にどんな言い方があるの?」
ハンジはまた深くため息を吐くと、
ソファーに座り込む。
「ハンジ。君は書類を作成する為に
私の部屋へ来たのではないのか?」
エルヴィンもため息を吐くと、
ハンジの方を見た。
「そうだよ。」
ハンジは片手で書きかけの書類を手に取り、
はためかせる。
「でもさ、納得いかないんだもん。」
「……そうか。」
エルヴィンはそれだけ言って、
視線を書類に戻した。
「調査に行ってる間、
エマとエルヴィンの距離は
縮まったんでしょ?」
「……そうだな。」
「それなのに、エマは今
リヴァイのところにいる。」
「エマがリヴァイを選んだからな。」
「ほんとにそうなの?」
「……どういう意味だ。」
「エルヴィンが、
エマをリヴァイのところに
行かせたんじゃないの?」
ハンジの発言を聞き
エルヴィンはまたため息を吐くと
「何故そうなるんだ。」
と、書類を書く手を止めた。
「エマに言わなかったの?
自分を選んで欲しいって。
エルヴィンが引き留めたら、
また自分のところに
帰って来たかもしれないのに。」
エルヴィンは口を噤む。
「どうせ、“君がリヴァイを
選ぶことは分かっている!
早くリヴァイの元へ!”
とかなんとか言っちゃったんでしょ?」
「……そんな言い方はしていない。」
エルヴィンはそう言いながら顎を撫でた。