第34章 深い眠りの中で
それからしばらくの間、兵団は休暇に入る。
兵士たちは故郷に帰る者もいれば、
基地に残り、仲間と過ごす者もいた。
そんな中。
「エマさん、ちょっといいか。」
エマはジャンに声を掛けられる。
ジャンの右腕は、まだ包帯で吊られたままだ。
「ジャン。どうしたの?」
エマはジャンの目を見入る。
「エレン、まだ目を覚まさないらしい。」
ジャンは伏し目がちで言った。
「今も飲まず食わずで眠ったままだ。」
「……そうなんだ。」
エマはジャンの辛そうな表情を見て、
言葉に詰まる。
「エマさん。
エレンに何か作ってやってくれないか?」
「……え?」
「あいつ、寝てるけど
腹空かせてんじゃないかなぁ。
美味いもんが目の前にあったら、
反応するかもって思って。」
ジャンはきっと、藁にもすがる思いで
自分に料理を作ってほしい、
と提案したんだろう。
ジャンの心苦しい気持ちが伝わる。
胸の奥が鈍く痛む。
だが同時に、
力になりたい。
そう強く思った。
「そうだね。
エレンの好きなもの、作ってみるよ。」
エマはジャンに笑いかけ、
「だから、そんな顔しないの。
ジャンの頼みごと、私が断るわけないでしょ?」
そう言ってジャンの頭をくしゃくしゃ撫でる。
「……ありがとう。」
ジャンは小さく笑うと、エマに頭を下げた。