第31章 調査兵団帰還
「あれ、これ、もしかして
エルヴィンさんの作戦でしたか?」
エマはエルヴィンの腰に
手を回しながら問いかける。
「そうだな。
いつも優しくしているようでは、
刺激が足りないかと。」
エルヴィンはそう言って笑うと、
エマの顔を見つめた。
「リヴァイが帰ってきたら
この時間も終わりかと思うと、
さすがに寂しいな。」
エルヴィンの悲しそうな顔を見て、
エマは思わず俯く。
「返す言葉もありません……
でも正直、どんな顔でリヴァイさんに
会えばいいのか分からないです。」
エマはそう言ったきり、口を噤んだ。
「調査から帰ってきたリヴァイは
大体荒れているからな。
エマに会ってどうなるかは
私にも想像がつかない。」
エルヴィンはエマの髪を撫でながら目を瞑る。
「犠牲者は出ているんですかね……」
「何の犠牲もなしに世界が変えられる程、
この世は甘くできていないよ。」
エルヴィンのその発言に、
エマはまた言葉を失った。
「私たちはここで信じて待つだけだ。」
エルヴィンは優しい目でエマを見つめる。
その時。
「エマ。帰って来たかも知れない。」
エルヴィンは立ち上がると
足早に基地の外へ向かい、
エマもエルヴィンの後を追った。
エルヴィンが外に出た直後、
早馬で一人の兵士が基地の前に帰って来た。
そしてエルヴィンに敬礼すると、
今回の調査の報告を始める。
エルヴィンは大方の報告を聞くと
馬に跨り、残りの調査兵の元へ向かう。
エマは祈りながら、その背中を見送った。