第30章 触れない理由
「迷っている、と言うのは、そういう意味です。
エルヴィンさんの懐に
飛び込んでしまいたい気持ちと、
リヴァイさんを待ちたい気持ちが
入り乱れている状態で、
自分でも収拾がつかずにいます。」
エルヴィンはその言葉に少し頬を緩める。
「君は、正直な人だね。」
「……それしか取り柄がありませんから。」
「キツイことを言って悪かった。」
エルヴィンは軽く目を瞑った。
「君の気持ちが聞けて嬉しいよ。
私に対しても、少しは気持ちがある
ということが本当ならね。」
そう言ったエルヴィンの優しい表情に、
エマは思わず涙ぐむ。
そして涙を悟られないように目を伏せた。
「私は君にとって、リヴァイのいない淋しさを
紛らわす存在でいてもいいと思っている。
君がそれを望むなら、
リヴァイが調査に行っている間は、
私が君の傍に居よう。」
「私はそんなこと」
「分かってる。」
エルヴィンはエマの言葉を遮る。
「だが私は君の心を欲してるんだ。
ずっとリヴァイの
二番煎じをするつもりはない。」