第30章 触れない理由
次の日から、エマとエルヴィンは
一緒に憲兵団の基地へ行き
それぞれの働きを終えた後、
食堂で一緒に食事をとり、
また一緒に調査兵団の基地へ戻る
という繰り返しの毎日を送る。
そんなある日。
「エマ。少しいいかな。」
昼休憩の最中、
エルヴィンに呼び出されたエマ。
「どうかしましたか?」
「今日は仕事が立て込んでいて、
なかなか帰れそうにないんだ。」
「大変ですね。待っていましょうか?」
「いや、暗くなると一緒に馬で帰るのは
少し危険だろう。
馬車を頼んでいるから
先に帰っていてくれないか?」
エルヴィンは申し訳なさそうな顔でエマを見た。
「分かりました。
あまり無理しないでくださいね。」
エマはエルヴィンを安心させるように
笑いかける。
「ああ。大丈夫だ。また基地で。」
エルヴィンはそう言うと、
足早に廊下を歩いて行った。