第29章 憲兵団での仕事
「私は片腕で馬に乗るのには何ら支障はないが、
エマ、私の後ろでも構わないか?」
「ありがとうございます。
疲れたら替わりますよ!」
エマのその言葉に、
「エマの後ろか……
楽しそうだが、遠慮しておくよ。」
エルヴィンはそう言って含み笑いをする。
「あ。今、お前が馬なんて乗れるのか
って思いましたよね?」
「いやいや、そんなこと思わないよ。」
「嘘だ。顔にそう書いてますよ!」
二人はそんなことを話しながら
馬小屋で馬を借り、調査兵団の基地を目指す。
『そう言えば、
エルヴィンさんの後ろに乗るの、初めてだな。』
エマはそんなことを思いながら、
エルヴィンの背中にしがみつく。
「エマ。ここから道が悪くなる。
しっかり掴まりなさい。」
エルヴィンに声をかけられ、
エマはエルヴィンの腰に手を回した。
温かい体温が身体に伝わる。
『こうしていると、なんか安心するな……』
エマはついそんなことを考えてしまうが、
その気持ちを振り払うかのように、
大きく首を振った。
「ありがとうございました。
エルヴィンさんの後ろ、快適でした。」
エマは馬から降りると、
エルヴィンに笑いかけた。
「そうか。それなら良かった。」
エルヴィンは馬を繋ぐと、
エマと並んで基地の中へ入る。
「明日も今日と同じ時間にここに
待ち合わせでいいかな?」
「はい。明日からまた頑張りましょうね!」
エマはエルヴィンに声をかけると、
部屋へ歩いて行った。