第28章 葛藤する想い
基地に帰る道中、
エルヴィンはエマに普通に接し、
いつも通り、たわいもない話で笑い、
興味深い話を教えてくれる。
いつも包み込むような優しさで
接してくれるエルヴィンのことを
とても大切に想っていることに、違いはない。
それでもリヴァイの事を考えると、
この感情はただの親しみなのだと思えてもくる。
それなのにエルヴィンを拒むことはできない。
むしろ、受け入れたいとも、
支えたいとも思ってしまう。
この矛盾した自分の感情に、
エマは憤りを感じていた。
基地の入り口に着くと、
エルヴィンは立ち止まる。
「エマ。」
エマはエルヴィンに呼ばれ、
立ち止まり振り返った。
「私はいつまでも君のことを
諦めきれないだろう。
ただ、この私の気持ちが迷惑になったり、
重荷に思ったりしたときは、
構わず教えてほしい。
そして、ハッキリ拒否してほしいんだ。」
エルヴィンは少しため息を吐くと、話を続ける。
「昨日もそうだったが、
君の前では自分の行動を制御するのも
なかなか難しいようでね。
だが君から完全に嫌われるのは避けたい。」
「エルヴィンさん、私」
「大丈夫。そんな顔をするな。
返事だけしてくれ。」
エルヴィンはエマの言葉を遮ると、
エマの頭に軽く手を置いた後、歩き出す。
「君には拒否する権利がある、
そういう話だよ。」
「………分かりました。」
エマは少し俯き頷くと、
エルヴィンの後に続き歩き出した。