第28章 葛藤する想い
エルヴィンとエマは
静かに抱き合ったまま朝を迎えた。
昨晩の雨空とは打って変わって、
青空から木漏れ日が差し込む。
「エルヴィンさん、朝、です。」
エマは少し痺れた右手で
エルヴィンの肩をそっと叩くと、
「……ああ。」
少し間が開いた後、
エルヴィンはゆっくりエマを離した。
「すまない。私は君に」
「謝らないでください。
結局は私も受け入れていたので、同罪です。」
エマはエルヴィンの言葉を遮る。
「昨日から、
私の情けないところばかりを見せているな。
自分の軟弱さには呆れるよ……」
「情けないところだなんて。
私は、いつもしっかりしているエルヴィンさんが
自分に甘えてくれたことは、嬉しかったです。」
エマは自分の首元に手を当てる。
「でも、私の独りよがりな発想を
エルヴィンさんに伝えたから
ますますエルヴィンさんを
追い詰めたみたいになって」
「それは違う。」
エルヴィンは顔を上げ、エマの手を握った。
「エマの言葉は、とても嬉しかった。
……だが、だからこそ辛いんだ。
誰よりも大切に想っている相手が、
自分のことをこれだけ理解してくれているのに。
……君が私だけを見ることはない。」
エルヴィンの手は、いつものように温かい。
だが、力のこもったその手は、
少し震えているようにも感じた。
「エマ。私は君の心が欲しいんだよ。」
「エルヴィンさん、私、」
「大丈夫だ。分かっている。」
エルヴィンはエマの言葉を遮り、
優しく笑いかける。
「そろそろ基地に戻ろう。
雨上がりだから、虹が見えるかも知れないな。」
エマはエルヴィンの無理に作った笑顔に、
胸が痛むのを感じた。