第27章 距離が縮まる夜
「こんな時だからこそ、なんじゃないですか?
こんな時だからこそ、
エルヴィンさんは私を求めたんだと思います。」
エマはエルヴィンの髪をそっと撫でる。
「エルヴィンさんも、
あまり無理しないでください。
急に襲い掛かるとか、らしくなさすぎます。」
エルヴィンはエマの肩に顎を乗せた。
「……エマにも
私の考えはお見通しのようだな。」
「まぁ、何だかんだ私たちも
それなりに長い付き合いですからね。」
「もっと長い付き合いの同期にでさえ、
こんなに弱いところは
見せたことがなかったのだが……」
「弱いですか?私はそうは思いませんけど。」
エマはエルヴィンの髪を撫で続ける。
「私に見通されるくらいになるまで、
一人で不安溜めこんで、心労抱えて。
それでも、
誰の前でも弱みは見せないようにして。
本当に心が弱い人なら、
そんなことできないですよ。
強い人だからこそ、こうなるんだと思います。」
エルヴィンはその言葉を聞くなり、
強くエマを抱きしめる。
「……本当に、
どうして君はそうなんだろうね。」
エルヴィンはエマの顔を引き寄せると、
静かに唇を重ねた。
「もう君以外、愛せそうにない。」
エルヴィンはそう言うと、
また強くエマを抱きしめた。
エマは何もいう事が出来ないまま、
エルヴィンの熱を帯びた肩をそっと摩った。