第27章 距離が縮まる夜
「少なくとも、私の知ってるエルヴィンさんは、
同意もなくこんなことしないです。」
エルヴィンはそう言うエマの目を見つめると、
深いため息を吐く。
「……エマには敵わないな。」
「エルヴィンさんは、
そんな悪い男になんてなれないですよ。」
エマは少し笑うと、
エルヴィンの胸元のボタンに手を遣る。
「第一、 こんなにボタン開けてるから
私が意識し始めて、
こんなことになるんですよ。」
そう言ってボタンを締めようとするが、
締まりそうにもない。
「これは本当にわざとではない。
ただサイズが合わなくて
締まらなかっただけだ。」
エルヴィンは思わず頬を緩める。
「……私の被害妄想でした。」
エマの一言に、エルヴィンは笑い出した。
「エマ。驚かせてすまなかったな。」
「本当ですよ。
驚くとかじゃ済まされないことに
なるところでしたよ。」
「……私はそうなっても
一向に構わなかったのだけどね。」
そんなことを呟くエルヴィンに
強い眼差しを向けるエマ。
「だが、こんなことが原因で
嫌われるのは嫌だな。」
エルヴィンが申し訳なさそうに
エマの目を見つめると、
「……嫌いにはなれないですよ。」
そう言ってエマは少し俯く。
「エマ。キスしてもいいかな?」
「ダメです。と言うか、聞いたらしてもいい
ってもんでもないですから。」
エマの即答に、エルヴィンはまた笑い出す。
「エルヴィンさんがそこまで積極的だと
思ってませんでした……」
「今まで色々とため込んでいたからね。
今日は少し感情にガタが来た。」
エルヴィンは立ち上がると首元を手で擦る。
「いつも君を抱きたいと思っていたから。」
その一言を聞き、
エマはエルヴィンの後ろ姿を見ながら、
一気に赤面した。
エルヴィンはそっと後ろを振り返るとエマを見る。