第27章 距離が縮まる夜
「確かに、老朽化が激しいな。」
部屋に入ったエルヴィンは
上着を脱ぎながら呟く。
部屋自体は四畳半程しかなく、
そこにはシングルベッドが真ん中に置かれ
申し訳程度に、小さなランプが
備え付けられていた。
「こんな部屋しか見つけられなくて
すみません………」
「エマが謝ることではない。
私は見つけられなかったのだから。」
「それにしても、雨、止みそうにないですね。」
エマは窓の外に目を遣る。
「そうだな……
エマ。取りあえずシャワーでも
浴びてきなさい。」
エルヴィンのその言葉に、
エマは慌てた表情でエルヴィンを見た。
「言い方がダメだったかな……
君は宿探しで相当雨に濡れたようだから、
シャワーでも浴びて温まった方がいい。」
エルヴィンは笑いながら丁寧に言い直す。
「なんか私、意識しすぎですね……
恥ずかしくなってきました。
シャワー、先に浴びさせてください。」
エマはそう言って少し顔を赤らめ、
シャワールームに向かった。
「エルヴィンさん、お先でした。」
エマがタオルで髪を拭きながら部屋に戻ると、
エルヴィンはベッドで横になり、
うたた寝をしていた。
『そりゃ疲れるか。
私の喧嘩も止めて、宿探しに走って。
結局荷物もほとんど持ってくれてたし。』
エマはエルヴィンの寝顔を見つめる。
『初めて寝顔見るけど……
エルヴィンさん、綺麗な顔だなぁ。』
そんなことを思いながら、
雷音の響く窓の外に目をやった。