第2章 調査兵団の料理人を目指して
エマはそれから先、5年間に渡り、
憲兵団の料理人として必死に働く。
若くして憲兵団の食堂に配属されたこともあり、
時にはそれをよく思わない同僚に
いじめられもしたが
持ち前の明るさと、暴力的な皮肉さと、
鍛え上げた料理の腕で立ち向かい、
5年後には、副料理長にまで登りつめた。
その間、壁の内側では
様々なことが起きていた。
突然巨人が壁に穴を空け、
侵入してきたかと思えば、
ある人物が巨人に変身する力を携えており、
壁の穴を塞ぐことができただとか、
女型の巨人がウォールシーナで暴れだし、
民間に多大な損失を与え
その騒動が収まった直後には、
また兵士が数人、
巨人化する事例も報告されていた。
一般市民なら
あまり知り得ないようなことでも
ここでは簡単に、
しかも正確に知ることができる。
ここは、そういう場所だ。
憲兵団の基地で働くことは、安全であり
知らない世界を知ることも簡単であり
何より快適だった。
だけど心の奥底では
いつも考えることがある。
『リヴァイさん、
もう待ってくれてないかな……』
思えば5年間、そんなことばかり考えていた。
ここで務めているからには、
とてもいい縁談の話も舞い込むし
食堂に来た憲兵に口説かれることだって
少なくはない。
何より自分が一般的にいう
“適齢期”だということも重々承知していた。
内地で憲兵と結婚して、安全な暮らしをするのは
いいことかもしれない。
だけど、あの約束がある限り、
自分はここにいるべきではない
そう感じるばかりだった。