第2章 調査兵団の料理人を目指して
「リヴァイ、あの例の食堂の
美味しいスープの御嬢さん、
憲兵団に引き抜かれたらしいぞ。」
基地に戻って数日後、
突然エルヴィンの部屋に呼ばれたリヴァイは
試験の事の真相を聞かされる。
「憲兵のナイルが、
試験の視察に来ていたみたいでな。
どうやら彼女に目を付けたようだ。
若くて、やる気があって、
何より料理がうまかったところに
惚れ込んだらしい。」
リヴァイはため息をつく。
「……なるほどな。憲兵からの引き抜きか。
断るなんて選択肢は用意されてねぇ訳だな。」
そう言って、客間のソファーに腰を掛けた。
「……残念だったな。
料理を見初められて引き抜かれたからには
よほどのことがない限り、
こっちの料理人になることはできないだろう。」
エルヴィンもため息をつく。
「私も、もう一度
彼女の料理が食べたかったな。」
エルヴィンは
リヴァイの正面のソファーに座ると、
何か考え込むように腕を組んだ。
「どうにかこっちに引き抜けねぇもんか……」
「まさかリヴァイの口から、
そんな言葉が聞けるとは。」
エルヴィンはリヴァイの発言に
少し興奮したような声を上げる。
「相当彼女に
惚れ込んでいるようだな、リヴァイ」
リヴァイの肩を小突くエルヴィン。
「あいつに惚れ込んでいるんじゃねぇ。
あいつのスープに惚れ込んでんだよ。」
リヴァイは眉間の皺を一層濃くさせた。
「分かった、分かった。
まぁ、時期が来たら話題に挙げてみよう。
だが、そう簡単に手放さないだろうから
期待はしないように。」
エルヴィンは自分の机に戻り、
重なった書類を手に取った。
『チッ……
……うまくいかねぇもんだな。』
リヴァイはソファーに深くもたれかかると、
今晩の食事のことを考えて
また少し、憂鬱になった。