第23章 壁外調査、三日前は
「……もし生きて帰れたら、
また話、聞いてくれる?」
ジャンのその問いに、
「当たり前でしょ。ジャンの相談は
私が聞く担当なんだから。」
と、エマは笑う。
「ありがとう。必ず生きて帰るから。」
「分ってる。ジャンは帰ってくるよ。」
エマはジャンの震える肩を抱きながら、
壁外調査に出る意味を改めて知った。
死が近くにある恐怖を、彼らは知っている。
死がもたらす悲しさを憤りを、
彼らは知っている。
それなのに戦いに出る。
人類のために。
エマは自分も泣きそうになるのを堪え、
ジャンの頭を撫で続けた。
「……これ、またリヴァイさんに目撃されたら
俺、今度こそ削がれる。」
ジャンは急に我に返ったようにエマを離し、
「まぁ、否定はしない。」
エマは乾いた笑い声を出す。
「そろそろ、行くよ。」
ジャンはそう言って
エマの髪を優しく撫でた後、
基地に向かって歩き出した。
「じゃあ、またね。」
エマの呼びかけにジャンは
「また、な。」
と、後ろ手で手を振った。