第23章 壁外調査、三日前は
しばらくすると、
「急に悪かったな。」
そう言ってジャンはエマを離した。
「そんな顔すんなよ。」
ジャンはエマの頭をくしゃくしゃと撫で、
「冗談だよ。びっくりしただろ?」
と、ニヤリと笑う。
エマはジャンの目を見つめながら、
「ジャンは冗談であんなことできない。」
そう言って、頬を強くつねった。
「い、いたた、痛いんだけど!」
ジャンはつねられた方に身体を傾ける。
「何か相談があるんだったら、
ちゃんと話してよ?」
エマのその言葉にジャンは
「……ありがとう。」
と、また少し寂しそうな顔をした。
エマはジャンから手を離すと、
「ジャン。ほら、早く!」
そう言って、また両手を広げる。
「え?」
ジャンは不思議そうな顔をするが、
エマはそんなジャンを抱きしめた。
「ジャンが調査に行く前に
抱きしめてもらいたかった人、
私ってことにしといたらいいかな?」
ジャンはその言葉に吹き出すと、
「エマさんは自意識過剰なんだよ……」
そう言ってエマを抱きしめ返す。
「そうかもね。」
エマは少し笑うと、ジャンの頭を撫でた。
「でも、エマさんに隠し事はできないな。」
涙声のジャンは話続ける。
「調査に行く前に、
エマさんと会えて良かった。
抱きしめてもらえて良かった。」