第23章 壁外調査、三日前は
「俺なんかに告白断られたくらいで、
士気が下がったら困るからな。
出来ることは、なるべくする。」
ジャンの真面目な返答に、
エマは目を丸くする。
「さっきの子には、
無理なのは分かってるから、
せめて抱きしめて欲しい。
って言われたから、そうしただけ。」
「ジャンって実は大人なんだね……
なんかそういうところ、
すごい恰好いいと思うよ。」
エマは感心したように頷く。
「……なに?
エマさんも、また俺に
抱きしめてもらいたくなった?」
そう言ってジャンが悪戯に笑うので、
「それじゃぁ……」
と、エマも冗談目かして手を広げて見せる。
するとジャンは、
間を置かずエマを強く抱きしめた。
「え、今の、かなり冗談な流れだったよね?」
エマは戸惑いながらジャンに問いかける。
「俺はいつでも、本気だけど?」
と、ジャンはエマの耳元で
呟くように言った。
「今のはエマさんのせいだからな。
エマさんに恰好いいとか言われて、
何もしないでいられる訳ないだろ。」
ジャンのその言葉に
エマは何も言えずにいると、
「エマさんも、手、回してくれる?」
ジャンはそう言って、
エマの手を優しく握る。
「ジャン、どうしたの?
なんかいつもと違うよね?」
エマの問いかけに、
「……今だけでいいから。頼む。」
ジャンは今にも泣き出しそうな声を出した。
エマは戸惑いながらも、
そっとジャンの腰に手を回す。
「ごめん、ありがとう。」
ジャンの声は少し震えていた。
エマは何も言わずジャンを抱きしめた。