第19章 決断の時
壁外調査の日程が決まってからというもの、
調査に向けての準備や訓練で慌ただしくなり、
エマが兵員と会話をする時間は
殆どなくなった。
そしてエマ自身も、
調査に持っていく保存食の製造で忙しくなる。
その忙しい日常の中でも、エルヴィンやハンジ、
エレンのいる104期生たちは、
時折食堂に顔を覗かせに来てくれる。
だが、リヴァイが食堂に来ることは
なくなっていた。
それでもエマは、いつかリヴァイが
来てくれるかもしれないと思い、
夕食の時間が終わってもしばらくは食堂に残り、
その後はあのテラスでリヴァイを待つ。
そんな日常の繰り返しが、3週間ほど続いた。
「エマ。
リヴァイと話は出来ているのかい?」
エマは食堂でエルヴィンに声をかけられる。
「いえ、ここ3週間程、顔も見ていません。」
エマはそう言うと、寂しそうに笑った。
「……そうか。」
エルヴィンはエマの頭を軽く撫でると、
「あと1週間もしないうちに兵団は出発する。
リヴァイには私から声をかけておこう。」
そう言って立ち上がった。
だが、
「エルヴィンさん!大丈夫です。」
エマはエルヴィンの服の袖をつかむ。
「リヴァイさんが会いたくないんなら、
私はそれでいいんです。」
エマのその言葉に、
「……それは本心なのかな?」
エルヴィンはそっと尋ねる。
エマは何も言えず、
その場に立ちすくんだ。
「今日の夜、少し話がしたい。
部屋に来てくれないか?」
エルヴィンはそう言うと、
静かに食堂から去った。