第19章 決断の時
次回の壁外調査の決定は他の兵員にも伝えられ、
そしてその話はエマの耳にも入って来た。
「エマ。あなた、
壁外調査に行く兵団を見送ることは
まだしたことがなかったわよね?」
エマは厨房で
副料理長に声をかけられた。
「兵団が調査に行く前日は、
たくさんの食材が寄贈されるの。
だから、あなたはここで私たちと
彼らが満足いく料理を作りましょう。」
副料理長のその言葉に、
エマは違和感を覚える。
「言っている意味は分かるわね?
もしかしたらそれが
最後の晩餐になる兵員だって
いるかもしれないってことが。」
エマは静かに頷いた。
「……あなたは色んな兵員と
仲が良いようだから言っておくわ。
どれだけ真面目に訓練を受けた兵士でも
どれだけ強い兵士でも調査に出ると
何が起きるかわからないの。」
副料理長はきっと何度も
その別れを経験してきたのだろう。
いつもは厳しい人なのだが、
目には薄っすらと涙が浮かんでいる。
「……だから私たちはとにかく
彼らの力の源になるような
美味しい物を作りましょう。ね。」
エマは副料理長を見つめると、
「分かりました。任せてください。」
そう言って、副料理長を
安心させるように笑いかけた。