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Fleeting promise【魔法使いの約束】

第2章 運命を持たぬ者












『……運命は意思に関わらず起こる未来でしかない。けれどあなたはこの世界には無いはずの運命そのものだった。ならあなたはその運命を持たない側の者として、一体何を求めるつもりだい?』



夜空の中でムルはそう呟いた。目の前には横たわる茜の姿が。けれど今の彼女の意識はこちら側にはない。人間と魔法使いとの板挟みに遭い、ひどく恐怖を得たその魂がこちら側へ来ることを拒んでいるからと。



『あなたは、あなた自身の意思でこの私と接触できる、唯一の存在だ。だから私はあなたに問い掛けたい。誰とも交わることのない、何も無い運命で、この世界に何を求める?』



返事が帰ってくることは無い。それでもムルは空っぽの彼女に問いを投げ続けた。



『無理に考える必要はない。求めるものも、受け止めるものも、本来あなたには必要のないものだ。それでもこの世界に来た時点で、あなたはあなた以外の誰かの運命に巻き込まれてしまった』



横たわる彼女の脇にしゃがみこみ、愛しそうにその髪を撫でる。ムルが触れたところから砂のように消えていくが、ムルはそれを静かに見守った。



『あなたのような運命を持たない者なら、その誰かの運命はいとも容易く変えられるだろう。そうすることもひとつの未来だ。この世界に与えられた運命を見守るか、敢えて干渉して全てを変えてしまうか。それはあなた次第なのですからーーー』






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