第2章 酔いに任せて(後編)R-18
──2020年 12月31日 23時50分──
どれくらい眠ったのか。一緒に年を越したかったけれども身体がお酒に侵食されてしまったので仕方ない。テレビの音が夢の世界から現実に私を引き戻すと、逞しい身体に包まれている感覚がした。
「んっ…七海…さん?」
七海さんの膝に乗ったまま私は小一時間程寝ていたらしい。目覚めた私に気付いた七海さんは、再び頭を撫でてくれた。
「起きましたか?もうすぐ新年ですよ」
時計の針は23時50分。七海さんと一緒に年を越せそうだ。
「良かった間に合った!って…すみません」
一応は鍛えている2級呪術師が膝に乗っているのだ。シンドイに決まっている。どこうとしたが左手が何かに引っかかっている。手の方を見ると七海さんのシャツに指を突っ込んでいるではないか。1つ外されたボタンの隙間から逞しい胸板が見えた。
「えっ!?手が引っかかって!すみません」
抜こうとした手は七海さんに握られた。
「引っかかったのではなく、貴女が自分から入れたんですよ。私の胸元に」
「ええぇ!!すみません!」
顔が熱い。帰宅を促され他にも関わらず居座り、膝の上で寝て無意識でシャツのボタンを外すなんてとんでもない女だ。嫌われたかもしれない。
「謝ってばかりですね。まぁ、男の胸元に手を入れるのは些か積極的過ぎるのはありますが」
親しい者しか気付かない程度に七海さんの口元が緩んだ。
「ごめんなさい」
凝りもせず謝罪の言葉を口にする。
「それはもう飽きました」
そう言うと謝ってばかりの私の唇に優しく唇で蓋をした。
「恋人から聞きたい言葉は謝罪ではなく、好き…の一言ですかねぇ」