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【呪術廻戦】ななみん詰め合わせ【七海】

第3章 私にしておきなさい


静まり返った公園にいる男女。ベンチに腰をかけ自販機で買ったお揃いのロイヤルミルクティーに口をつける。風はないが静寂と夜空が寒さを増長させた。口からの息は白く、手元のドリンクで暖をとりながら語らう。傍から見ればカップル…で間違いないだろう。

「…やっぱり自分は違うんだなって思うんです」
「何が違うんです?」
「他の子に比べて五条さんには期待されていないなって・・」

私が買ったミルクティーを飲む彼女の目は悲し気だ。傍から見たらカップルでも彼女の心は五条に奪われているのは確実で。彼女への恋心を隠しながら相談に乗る“良い先輩”を演じている自分は滑稽だ。

「なぜそう思うんです?」
「態度が違う・・かな。他の呪術師や生徒と比べて。見てくれていないっていうか」
「見てくれないね・・。君はもう立派な呪術師だ。準1級にだってもうすぐ手が届く。保護対象ではありません」

胸に湧き上がる不快な苦みを抑えつつ返した。言葉にトゲはなかっただろうか。苦みを甘さで中和しようとミルクティーを流し込む。いつもなら珈琲を買うがなぜか今回は彼女の趣味に合わせてしまった。甘すぎたかと後悔していたが、苦みを抑えるのに丁度いい。

「すみません・・甘えた事言って。五条さんは憧れで・・認められたくて」

そんなことは分かっている。信頼も信用もしている、最強の呪術師。尊敬できない理由を並べれば、高専の頃からのつもりに積もった色々があるが・・。それに今度は“嫌い”が強くでそうだ。自分の狭量さに情けなくなってくる。ボトルを握った彼女の手の甲に雫が落ちる。空を見上げても星が綺麗に瞬く晴天。雫がどこから来たか確認する勇気はない。砂糖では誤魔化せない憎悪で胸がいっぱいになりそうだ。

「君は五条さんの為に呪術師になったんですか?」
「・・違います」
「そうですか。まるで五条さんの為に働いているようですよ」
「・・・」

意地悪が過ぎたか。手の甲の水溜まりは次第に面積が広くなっている。自責の念を流し込むかのように一気に喉を潤した。

無言で寒空、どれくらい時間がたっただろうか。静寂をやぶったのは彼女の一言だった。
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