第16章 道
実弥side
体を動かしたいのは杏寿郎の本心だろう。
しかし本来のねらいはこちらではないのかと思わず笑う。
「お前、本当に星波を大事にしてくれてるんだなァ」
「あ、いや!決してやましい気持ちではないぞ!!」
「杏寿郎」
突然真面目な声色で名前を呼ばれて思わず姿勢を正す杏寿郎。
「何だ?」
「俺が死んだら、星波と風弥を頼む。」
突然の死という言葉に驚く杏寿郎。
「どうした?体は問題ないのではなかったのか?」
「いや、違ェ。今は何ともない。でも俺は秋にはもう23になる…いつどうにかなるかわからないだろォ。」
「む…」
「身を引ききれなかった俺のせいで、初婚もまだのお前に未亡人の子持ちの女を任せたいだなんて酷ェ話だとは思ってる。でも、お前なら…杏寿郎にしか、星波たちのことは任せたくねェんだ。頼む。俺が死んだら…」
ぐっと言葉を飲み込む。