第53章 恐怖を讃えるコラール【渋谷事変】
「すくっ、なあぁッ! 死ね‼」
板のような機械を向ける少女を、宿儺は触れることなく細切れの肉片に変えてしまった。
その様子に冷や汗を流しながら、漏瑚は宿儺に斬り裂かれた頭部を治し、息を呑む。
少女の手を離れた板を手に取り、「フム」と見つめた。
『携帯……いや、写真機の方か。大方、被写体の状態をどうこうするものだったのだろう。つまらん』
バキッと宿儺が写真機と表現した機械を壊す。
『次はオマエだ、呪霊。何の用だ?』
冷めた視線を向けられ、漏瑚は委縮しつつも、どうにか口を開いた。
『用は……ない!』
何? と眉を寄せる宿儺に、漏瑚はゴクリと唾を飲み下して続ける。
『我々の目的は宿儺、貴様の完全復活だ』
今は虎杖の適応が追いつかず、一時的に自由を得ているにすぎない。それは宿儺自身が一番 分かっているはずだ。
宿儺が虎杖から肉体の主導権を奪える機会など、次にいつ訪れるか分からない。今が絶好のチャンスだ。
『虎杖 悠仁が戻る前に、ヤツとの間に“縛り”を作れ! 肉体の主導権を永劫 得るための“縛り”を! 虎杖の仲間が渋谷に大勢 来ている! やり方はいくらでもあるはずだ‼』
『――必要ない。俺には俺の計画がある』
そう、宿儺は漏瑚の提案を切り捨てた。驚愕する漏瑚は『なぜ』の言葉も出てこない。そんな漏瑚を見やり、宿儺はククッと喉を震わせて笑った。
『だが そうか……必死なのだな、オマエたちも』
そして、愉しそうに目を細め、ニヤリと口角を上げる。
『指の礼だ。かかって来い。オレに一撃でも入れられたら、オマエたち呪霊の“下”についてやる。手始めに――渋谷の人間を皆殺しにしてやろう。それとも他に殺したいヤツでもいるか? 誰がいい? “二人”を除いて、誰でも殺ってやるぞ。いや、保険も入れると“三人”か』
『――二言はないな』
宿儺を警戒しながら、漏瑚は重たく息を吐き出した。
* * *