第53章 恐怖を讃えるコラール【渋谷事変】
大人になれと叱責してくる真奈美に、菜々子はスマホを向けて術式を発動しようとするが、巨漢のオネェ呪詛師であるラルゥが「えぇいっっ‼」と一喝を放った。
自分たちが傷つけ合うことは、夏油が一番 望んでいないと。
ビリビリと痺れる空気とラルゥの言葉に、全員が動けなくなる。
――決別。それ以外に道はなかった。
夏油の遺志を継ぐ真奈美と祢木、夏油の遺体を取り戻したい菜々子と美々子。
ラルゥとミゲルは あくまで夏油を王に据えるべく一緒に行動していた。その王となるべき夏油を失った今、どちらにつくこともしないとのことだ。
――「でも、忘れないでね。私たちは家族。いつかまたどこかで、一緒にご飯を食べるのよ」
そう低くも優しい声音でかけられた言葉に、菜々子と美々子は背を向けた。
家族。ことあるごとに口にし、夏油が大切にしていたもの。
皆で食卓を囲むのは、全てが終わった後。そのときは、真奈美や祢木のことも許せるだろうか。
うん、きっと許せる。
だって、夏油さまなら そうするから。
夏油の物語は終わった。他でもない、たった一人の親友の手によって。
もう誰にも汚させない。
――地獄に落ちろ。後悔させてやる。
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