第6章 アニマートに色づく日常【鉄骨娘/始まり】
盛岡の駅までですでに四時間。
気の遠くなるような乗り換えを繰り返し、釘崎はようやく大ッ嫌いでうんざりしていた田舎から出て、憧れの東京にやって来た。
きっと、学校ではキラキラとしたイケメンがアプローチしてきて、街を歩けばモデルにスカウトされてしまうのだろうと、釘崎は期待に胸を躍らせていた。
まぁ、先ほどのスカウトマンは見る目がなかったらしい。
では、学校生活の方はどうかと思ったが、どうやら呪術高専にイケメンはいないようだ。
「釘崎 野薔薇。喜べ、男子。美少女よ」
礼儀に則り、自分から名乗ると、赤いパーカーの男子生徒から名乗り始めた。
「俺、虎杖 悠仁。仙台から」
見るからにイモ臭い男だ。
絶対幼少(ガキ)の頃にハナクソを食べていただろう。
「伏黒 恵」
何だ、この男。自己紹介で名前しか言わないのか。
偉そうな男とか無理。
きっと、重油塗れのカモメに火をつけて遊ぶタイプだろう。コワッ。
残りは、と釘崎は黒く長い髪の女子生徒を見た。
まぁ、可愛いと言えなくもない顔立ち。自分には劣るが。
伏黒の無愛想とは違う、人形みたいに無表情だ。本当に生きているのか?
そんなことを考えていると、少女が口を開いた。
「……神ノ原……神ノ原 詞織」
「神ノ原って……惨劇があった、神ノ原?」
思わず眉を寄せてしまう。
【神ノ原の惨劇】――特級呪霊によって滅びた、御三家に次ぐ権力を持っていた呪術界の名門。この話は、釘崎のいたド田舎にも届いていた。
確か、三人ほど生き残りがいたはずだが、その一人がまさか同級生とは。
まぁ、自分には関係のないこと。
気を遣ってやる筋合いもない。
それにしても――……。
「はぁ……私って、つくづく環境に恵まれないのね」
イモ男に偉そうな男に人形みたいな女。
癖の強そうな同級生たちを前に、釘崎はくらくらとする頭を押さえた。
* * *