第6章 アニマートに色づく日常【鉄骨娘/始まり】
「あ、いたいた」
四人目の新入生との合流ポイントに着いてしばらく。五条が指し示した人物に、伏黒たちは目をやった。
そこでは、スカウトマンらしき男に、茶髪の少女が迫っている。
どうやら、「自分をモデルにスカウトしないのか」ということらしい。
呪術高専の黒い学ランの女子制服。
おそらく、彼女が四人目で間違いないだろう。
「え……今からあの子に話かけるの? わたしはムリ。ユージ、お願い」
「俺もちょっと恥ずかしいなぁ」
「オメェもだよ」
奇抜なメガネ、ポップコーンとクレープを片手ずつ持っていて、虎杖の浮かれ具合も際立っている。
もはや、隣にいるだけで周囲に仲間だと思われていそうで恥ずかしい。
ボソリと呟いた伏黒の言葉は伝わらなかったようだ。
タイミングを見て、五条が「おーい!」と呼びかけた。それに気づいた茶髪の少女がこちらを見る。
勝気な瞳が瞬き、少女がこちらへ向かって来た。五条と二言三言話し、伏黒たちの正面に立つ。
「釘崎 野薔薇。喜べ、男子。美少女よ」
ウザ。それが釘崎に対する伏黒の第一印象だった。
整った顔立ちだとは思うが、可愛さも綺麗さも詞織には遠く及ばない。
騒がしい虎杖、自意識過剰な釘崎、自由奔放な五条。
詞織という癒しがなければ、ストレスで胃に穴が空きそうだ。
これからの学校生活を想像し、伏黒はこっそりため息を吐いた。
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